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山田鉄兵研究室では、合成化学と物性化学の両輪を研究基盤として、我々だけのオリジナルな研究概念や機能性の実現を目指して研究を行っています。
例えば、酸化還元反応の平衡の温度依存性を利用した熱電変換材料である熱化学電池に、分子間相互作用、プロトン共役電子移動反応、ホストゲスト化学、相転移現象などの多様な物性化学のエッセンスを組み入れることで独創的な熱電変換システムを提案してきました。
他にも特殊な設計をした柔粘性イオン結晶、ケイ素のσ軌道と炭素のπ軌道との共役を用いた柔軟な機能性分子、イオンを認識する空間を有する配位高分子など、多岐にわたる合成化学・物性化学の分野の中で、我々だけの独自のアイデアで研究を進めています。
これらの研究は、テレビやニュースではあまり聞いたことが無いものが多いかもしれません。私たちはそれを誇りに思っています。「どこかで聞いたことのある最先端の化学技術」のさらに先を開拓する研究に挑戦しています。
分子技術を導入した熱化学電池
※最近Angewandte Chemie誌にレビュー記事を公開しましたので、興味がある方はそちらをご覧下さい。
熱化学電池は、溶液の酸化還元反応を用いて熱から電気を取り出すちょっと変わった熱電変換素子です。私たちはこの熱化学電池にホストゲスト反応、プロトン共役電子移動反応、ポリマーの相転移などの多様な分子技術を導入した熱化学電池を創製し、展開してきました。最近では実用化が十分に見通せる段階に来ております。
詳細はこちらを参照下さい。
柔粘性イオン結晶
一般に物質は固体・液体・気体の3つの相を取りますが、分子間相互作用を上手に制御すると固体と液体の間の中間相を作ることが出来ます。柔粘性結晶相は、そんな固液中間相の一種で、分子やイオンはサイトで回転運動をしながら周期的に並んだものです。柔粘性結晶は、質感としてはロウソクのロウに似ているものが多いです。イオン対で作られる柔粘性結晶(柔粘性イオン結晶)は、固体(っぽい)電解質や圧力媒体として最近注目されています。
私たちは分子合成化学を駆使して、柔粘性イオン結晶相を示す新しい物質をいくつも創製しました。中には球状では無く1軸に回転していたり、片方のイオンはパタパタしているだけだったりするものも見つかっています。このような新しい相を発見し、イオン伝導体や熱媒体としての応用展開を調べています。
電気化学的相転移現象
水は0 ℃、1気圧でその運動状態を大きく変えます。同様に高分子のコイル・グロビュール転移のように、分子集合体はある温度・圧力で急激にその集合状態を変化させます。私たちは電気的な刺激を利用した新たな相の探索をしています。
イオン選択性配位高分子
配位高分子とは金属イオンと有機配位子が配位結合することでできたジャングルジム状の構造体です。配位高分子の結晶中には分子と同等のナノサイズの隙間があり、結晶性の超分子ホストと捉えることができます。金属イオンと配位子の選択により多様な配位高分子が合成され、その隙間の大きさや化学的な性質の差によって様々なガス分子の吸着特性が報告されてきました。
私たちのグループでは水中で安定にイオンを取り込む多孔性配位高分子を新たに作り出しました。これにより、様々なイオンが溶けた溶液からアンモニウムイオンを選択的に取り出すことに成功しました。配位高分子の制御された細孔を使えば、他にも沢山の面白い性質を見つけることが出来ると期待しています。
ケイ素のσ軌道と炭素のπ軌道との共役を用いた柔軟な機能性分子
炭素のπ共役系は、発光特性、伝導性、配位能など多様な物性を示します。またsp2混成により構造が固定されるという特徴があります。一方、ケイ素原子を二つ並べたジシラン化合物はσ結合を介した共役系を構築することができます。σ結合は回転の自由度を有するため、柔軟な共役系という面白い機能材料を作ることができます。
私たちはこの共役系ジシラン化合物の合成手法を開拓し、多様なジシラン化合物を新規に合成しています。興味深いことに、これらの化合物はすりつぶしのような機械的な刺激、溶媒や温度などに応答してその色(つまり吸光特性)や発光特性を大きく変化させることがわかってきました。
柔軟な共役系のもつ多様な物性を探索しています。
私たちの研究室は2020年に始まったばかりです。新しいテーマに取り組み、すでにいくつかの面白い現象を見つけています。新しい研究テーマがゼロから立ち上がる瞬間を一緒に楽しんでくれる大学院生を募集しています。